変動所得とは何か 〜その本質に迫る!w〜

先日申告期限をとっくに過ぎた画家さんの平成25年分所得税の確定申告のお手伝いをしました。そっち方面は全く疎いのですが、ホームページを拝見した限りではなかなかに素敵な画風でした。私がいつの日か独立したら事務所にはあんな絵があったらイイかもしれないw

で、その方のここ3年間の売り上げは
平成25年・・・1500万円
平成24年・・・ 200万円
平成23年・・・ 800万円
と、かなり浮き沈みがありました。売れればデカイとはいえ量産できるものでもないでしょうし、作れば売れるという単純なものでもないようで、これではなかなか安定した生計を立てるのは難しそうですね。

画家さん曰く「一昨年の申告(平成23年分24年申告)の時には結構な額の税金を払って、その年はほとんど売り上げも立たなかったので生活が苦しかった」とのこと。売れたお金は工房や画廊の修繕で使い果たしたため、金欠の時には所持金がなくて買い物が出来ない期間が2ヶ月続いたり、賄い付きの食堂でバイトをしたりもしたそうな(/ _ ; )

画家業で発生する経費と言っても原材料はそれほどでもないし、工業製品を作るわけではないので機械類の償却もなく、ほとんど売上=利益みたいな損益構造のようです。奥さんを事業専従者に雇うような業種でもありませんので、どうしても「持って行かれる」感が強いようです。

「どうにか税金を減らしたい!」というのは誰しも考えることですが、先輩の税理士に相談したところ「平均課税イケるんじゃね?」との回答が…

平均課税とは単年度に変動の著しい所得(変動所得)や臨時に発生した所得(臨時所得)がドカンと計上された場合に、結構な急カーブの超過累進税率を緩和することで税負担の軽減を図りましょうという救済措置です。ただし、適用の対象となる所得の種類は条文上限定列挙されており、それ以外のものについては対象から外れます。

所得税法に規定されている変動所得とは

1.漁獲または海苔(のり)の採取から生ずる所得
2.はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ホタテ貝、真珠(真珠貝含む)の養殖から生ずる所得
3.原稿または作曲の報酬にかかる所得
4.著作権の使用料にかかる所得

とあり、単に「売上の波がある」というだけではダメで、1.2.については燃料費の高騰や船の修繕などによる赤字ではなく、あくまでも漁獲量や採取量の減少による赤字部分のみが適用範囲となります。

で、先輩税理士が着目したのは、画家の報酬は3.の「原稿または作曲の報酬にかかる所得」に含まれるのでは?というもの。作曲家も画家も確かに売れたり売れなかったり激しそうですよね。実際にそうですし、これは検討してみる価値はあるかも!

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・・・ということで自分なりに考えた結果は【適用不可】という我ながら非情なものでした。それはどうしてか。

まず、限定列挙されているということは各税目の非課税項目と同様、似てるからといって適用していいものではないのでは?という疑問があります。
確かに「年々の変動の著しい所得」ではあるのですが、条文上は「〜のうち次のものをいう」と【限定】されています。詳しくは書きませんがもう一つの「臨時所得」については

「臨時に発生する所得のうち次のもの、【その他これらに類する所得】をいう」

という言い回しになっていていくつか「こんな感じのもの」が挙げられていますが、変動所得の場合にはこの「類するもの」は存在しない、と解するのが妥当じゃないか?と考えました。単に「似てるから」というだけで適用を認めれば売上や利益の変動が著しい業種なんていくらでもありますので、我も我もと収拾が付かなくなるのは目に見えてます。養殖に至っては「はまちまだいひらめかきうなぎほたてがいしんじゅ」と呪文のようにわざわざ品種を指定してますからね。課税庁側としては限定列挙とすることで歯止めをかける必要があるのだと思います。
つまり3.でいう「原稿」とは「物書きさんが書く文章」と単純に一般的な意味で捉えるべき、ということで、結局のところ画家の報酬は「限定列挙から除外されている」という形式的なことですね。これが引っかかった一点。

もう一点は問題の3.についていえば
「どうして【原稿または作曲】に限定しているのか?」
というもの。ここで1〜4に共通するのは何だろう?と考えると、『売上の変動が著しく、かつ日持ちしない成果物』というところに法の主旨があるように思います。
1.2.の漁獲や養殖は今年たくさん取れたからといって来年に持ち越せるものではありません。3.の原稿や作曲の成果物にしてもほとんどの場合「水モノ」でしょうし、4.の著作権についてもロングセラーの著作物なんてそうそうあるものではないでしょうね(そもそもロングセラーになってる時点で変動はそれほど著しくありません)。
で、画家さんが描いた絵というものは果たしてこの「日持ちしない水モノ」にあたるかどうか?と考えると、販売目的の絵画は会計的には在庫がきく棚卸資産です。また、画家さんの描いた絵は楽曲や文章や書籍と違い、不特定多数の者に売上の推移の予測が不可能な形で反復的に継続販売するものではありません。絵の場合は買い手が付いて、それが売れた時点で収支は確定します。単価が1,000円だろうと10億円だろうと普通は一点モノでしょうから、一つの絵がロングセラーとかミリオンヒットということは理屈上あり得ません。
そう考えるとあら不思議。楽曲と絵画は似てるようでいて実は全く非なるものだったりします。
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そんなこんなで適用は難しいんでは?と再度先輩税理士と話し合ったのですが、激論wの末、否認されるリスクは画家さんにも認識してもらった上で申告することにしました。税務署対応はその先輩がするとのこと。計算の結果、納税額は1/3程度まで圧縮できました。この魅力には確かに抗い難いものがありますね。平均課税恐るべし。

今ひとつスッキリしないので税務署の見解が欲しいところですが、ヤブヘビになっても困るので問い合わせはしていませんw

ちなみに臨時所得とはプロ野球選手が契約時に獲得する契約金だったり、事業や不動産の休業や移転などの損失補填金がどーんと入ってきた場合が該当します。これを平均所得の金額と合算して適用を受けますが、細かい話はお近くの税理士までどうぞw

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