ある人生の谷底 その四

天皇陛下のお膝元、丸の内の静寂に満ちたオフィスで、関与先さんは堰を切ったように泣き出してしまいました。。。

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それまで私は、経営者の精神的なプレッシャーというものをかなり過小に考えていたようです。「この関与先さんは粉飾決算を屁とも思わないくらいだから、会社を潰すことも厭わないだろう」程度に思っていた訳です。

でも、それは違うどころか全くの逆でした。
経営者なら自分が立ち上げた会社が可愛くない訳がありません。また、家族や頑張って付いてきてくれる従業員たちだって可愛いに違いありません。その生活を思うからこそどうしても運転資金が必要だった。ましてや身の丈に合わない莫大な負債が、自分の生活や会社の経営を圧迫しているのも充分過ぎるほどに分かっていた。当たり前ですよね。
その上で自分が罪を被る覚悟で粉飾決算に手を染めていたのでしたが、今この瞬間にその緊張の糸がブッツリと切れた、ということでしょう。

そうした本質的なことにも思いが至らず、机上の知識を振りかざしていた自分が恥ずかしい。浅はかだった。。。と、このとき心の底から思いました。

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関与先
「(むせび泣きつつ)分かりました。でもこんなこと初めてなのでどうしたらいいのか分かりません」

商工会議所
「(そりゃ普通の人は初めてですよ、とあえて軽くツッコミを入れつつ)幸いにして社長さんは商品のデザインについてはかなりのセンスをお持ちのようですし、業務の流れも確立されているようです。それをパッケージにして同業者に売り込む、というのはどうですか?」

monotone
「ちょっと待ってください!そんなことしたら会社なり債務を整理した後、社長はどうやって生計を立てていけばいいんですか??」

商工会議所
「いや、今はそんな悠長なことを言っている状況じゃないでしょう?破産申し立て後の自由資金を確保するのが先決ですよ」

monotone
「そんなタコ足食いのような真似は承服できませんよ。話になりません」

商工会議所
(うわー、ウザい奴)←こんな眼で見られましたw
「ま、いずれにしろ会社の債務整理専門の方を紹介しますので、よくお考えになった上で後日ご連絡ください。
それともう一つだけ。粉飾の件は別として、破産すること自体は犯罪ではありません。法が認める歴とした権利です。それだけはお忘れなく」

monotone
「お世話様でした ノシ」
↑ニコリともしなかったのをハッキリ覚えてます

関与先
「。。。。。」

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あまり手続きのことは詳しくありませんが、破産する(破産宣告を受ける)ということは「資産を放棄すると同時に、それを裏付けとした債務も弁済できないことを世に宣告される」ということですから、これ以上借り入れすることは当然できません。免責の決定を裁判所からを受けて、そこで初めて「棒引き」になるのではありますが、とにもかくにも資産も負債も全て消え、あとは再び裸一貫でやり直すということになります。
そうなった時に活きてくるのがその人が持っているノウハウだったりセンスだったりする無形の「資産」のはずで、それを売り飛ばせなんて話はまるでナンセンスです。関与先さんもその辺りが引っかかっているようで、絶望感に拍車を掛けているのが明らかでした。

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関与先
「今晩嫁さんと話をして、その『専門家』さんの話を聞いて見ます。。。」

monotone
「分かりました。お話を聞けたら内容を教えてください」

関与先
「はい。。。天気もいいし歩いて帰りますわ。では」

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関与先さんは眼を真っ赤にしつつ、意気消沈の面持ちで皇居の方面に向かって歩いて行きました。大丈夫だろうか。。。

次回に続く。

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ある人生の谷底 その四」への2件のフィードバック

  1. 重い話ですね。 

    私もここまでストレートな話ではないですが、法学部の学生時代に無料法律相談を行っていた際に中小企業の経営者の方が相談に来まして。 その方はご多分にもれず会社の負債を個人保証を行っていました。 その方に対する学生のアドバイスが離婚をして財産確保を行え、と言うものでした。今考えてもひどい話です。 

    知識だけで考えるとろくなことにならないと言ういい例です。自分にとっての戒めです。 

    関与先さんがこの後どうなったのか、余りしりたくないような気がします。 

    • 会社員さんこんにちは。

      今回の場合、私は会社を整理して一からやり直した方があらゆる意味で楽になれると確信していました。その上で「窓口」へ連れて行ったその判断は、今でも間違ってなかったと思ってます。ただ、「ノウハウを売り払いましょう」のどこが『再生』なんだ?とかなり頭にきましたね。元を糺せば関与先さんの自業自得かもしれませんが、、、。

      もうちょうい続くのでお付き合いください。

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