鳩は申告書作っちゃダメですか?>はい、流罪です。

『「お客さん紹介します」の裏側』シリーズのまとめです。長くてごめんなさい。最後は鳩山先生の罪について、です。

ところで。
報酬の有無に関わらず、本人と税理士以外の人が他人の税務申告書を作成すると「税理士法違反」でタイホされます。このことはよく知られていると思います。石井社長の「言い訳」のように、法人の申告書を経理担当者が作るとどうなるかはよく分かりません。ダメな気がしますが、少なくとも税理士ではないのでハンコは押せません。この規定のことを「無償独占規定」と言うそうです。
その主旨は

「申告は本人が自らの責任で行うもの。

正しくない申告書を本人や専門家でない人が作ることは

『申告納税方式』の根幹を揺るがす。それを防止するため」

とのことです。本人が正しい申告をしていることが、税制や課税行政の仕組みの大前提になっている、ということですね。
税務調査の実施率は個人法人ともに年当たり10%行かないくらいだったかと思います。単純に考えて、調査が入るのは10年に一度のペース。実際には数年間の間に売上や粗利率、特定の費用などが不審な増減を繰り返していると「税務署が来る」「目を付けられる」と言われてます。ということは、そうじゃない人には普通は税務調査のお鉢は回って来ません。ということも、申告納税方式が存在しているからこそ、とも言えます。
ただ、「年老いたお母ちゃんの年金の申告書を健気な息子が作るのも不可」なのはどんなもんですかね?正しい、正しくないが金額の多少では計れない以上、基準なんて作りようもないのかもしれないですが何か納得いかないですね。

☆☆☆☆☆
さて本題。
では税理士ならば誰もが「正しい申告書」を作れるのでしょうか?答えは「そんなことはない」です。その辺の事情を本業さんからのお叱り覚悟で書いてみます。でも筋は通ってると思います。

税理士の資格を得るには、主に4つの手段があります。

  1. 税理士試験を受けて5科目合格する
  2. 租税法を受かって公認会計士になる
  3. 税務署に長年勤める
  4. ダブルマスター(大学院を修了する)

ざっくりこんな感じです。このうち2.3.4.の税理士さんは「使えない」という話を大変よく聞きますし、実際に見てきた限りではそういう人が多いのも確かです。
それはなぜか。それは「専門的に」税法を学んだ訳ではないから、です。
特に「会計士税理士」の先生は租税法は確かに学んだでしょう。でもそれは会計監査を行う上で必要最低限の予備知識程度のものです。会計士の受験問題(消費税の計算問題)を見せてもらったことがありますが、危うく飲んでもいないコーヒーを吹くところでした(あまりの易しさに)。会計士税理士を目指して受験する人の感覚では「オマケで税理士が付いてくる」が正解でしょうね。失礼しちゃう話です。世間的には似たようなものでも、会計の専門家と税務の専門家とはやはり分野が違います。

では1.の「5科目合格者」なら安心して任せられるのでしょうか?残念ながらこれも「そんなことはない」です。それは税理士試験の仕組みに問題があります。
税理士試験の受験科目は、全部で11科目ありますが、このうち会計科目2つが必須ですので、「5科目合格」と言っても税法科目は3つしか合格していない訳です。
人によっては「資格さえ取れればいい」ということで、敢えて「使えない科目」(≒受験者の少ない科目)を選択する人もいます。制度がそうなっている以上、選択の仕方は人それぞれに自由ですので、そこを非難するつもりはありません。ただ、

法人税法・所得税法・消費税法をよく知らない税理士が申告書を作る

という有り得ないことを、現行法が結果的に許容している現実があります。「鳩山先生」はまさに「税法を知らない5科目合格の有資格者」です。こんなのはオンリーワンであると願いたいです。

そして最も重大なことがあります。それは

税理士には免許更新制度がない

ということ。そうです。学校の先生と同じく「なった者勝ち」なんです、制度上は。よく知りませんが、このことは他の士業者と呼ばれる職業全てに共通するかもしれません。
税法はよく中身が変わります。租税特別措置法(特措法)なんていう付け焼き刃的な景気対策立法もあります。「資格さえあればあなたの地位は安泰ですよ」という仕組みではいけない筈ですよね。おじいさん先生が消費税のことを全く知らないということはざらにあります。

税法にはそれぞれ「基本通達」というものがあります。これは「課税する際の判断基準として国税庁長官が官吏に対して出す内部のお触れ」です。根拠は法律だったり裁判例だったりするので、全くの不当なものという訳ではありません。でも、やっぱりそれ自体は「法律」ではない。
自戒も込めて書くと、微妙な判断をするときには通達をあてにしてしまうこともあります。なぜなら「安心だから」そして「自分が不勉強だから」です。課税「する」側の論理を基準に課税「される」側が判断するんだから、税務署と揉めるはずがない。
でも、租税法律主義(課税の根拠は法律にあるべき)の観点から考えれば、思考パターンとしては王道から逸脱しているのは確かです。それでは納税者の権利は守り切れません。無能で怠慢な税理士ほど税務署とは「闘わない」傾向が強いんじゃないでしょうか。

そんなこんなで「無償独占規定」の現実には、冒頭で述べた建前と、税理士の既得権益を守るためという本音が混在しているように見えます。確かに税理士の職域の防衛は、その職務内容の専門性、特殊性、社会への影響からも重要です。でも業界として「悪徳税理士」「無能税理士」を抱えておく必要はないはず。最低限、

  • 2.3.4.の税理士は今後認めない(新規登録させない)
  • 税法の受験すべき科目数を増やす(ただし難易度は下げといてくださいおながいします)
  • 免許更新制度を設ける(試験は論述と手書きで申告書作れるかどうか。難易度はそこそこで分野は幅広く)
  • 倫理規定、処罰規定をもっと厳格にする(悪徳税理士は流罪☆

このくらいのことはして欲しいです。でなければ一部(と思いたい)で既に起きているモラルハザードが顕在化して、税理士の職域を自ら食い破ることにもなりかねません。

数年前に受けた租税法の研修で、

弁護士を目指す人たちに「将来どんな仕事がしたいか?」というアンケートを取ったところ、

『税理士の怠慢によって損害を被った納税者のために訴訟を請けたい』

という回答が最も多かった、と講師の大学教授が仰ってました。その時は「奴らを敵に回すのかよ…」と、心底ぞっとしたものです。
いま鳩山先生を見る限りでは、彼らには大いに頑張ってもらいたいと思います。なぜなら自分が頑張って資格を取った果てに、裏で「税理士なんて、、、」と後ろ指を指されるのは悲しいですからね。
「貸付金と借入金を相殺消去する」こと(またはそれを黙認すること)が「財務のコンサルティングでございます」なんてことがまかり通っちゃいけないはず。中小企業相手の場合、そこに歯止めをかけられるのは税理士しかいません。
残念ながら現状は

民主党、テレビ、新聞、日教組なんかと同程度に

自浄作用の働かない業界

と言わざるを得ません。

☆☆☆☆☆
「税理士なんてみんなワル」みたいなノリで敢えて書いてしまいましたが、私のよく知ってる(鳩山先生除く)税理士の先生たちは、私など足元にも及ばないくらいにみなさんしっかり勉強されています。「俺は6科目合格者だ」と言いたいが為に、必須科目を最後にして受験したという偏屈な人もいます(制度上は合格科目としては認定されなかったようですが)。
「税理士は偏屈な人が多い」とよく言われますが、偏屈でなければ税務署とは闘えません。闘えるほど勉強して来ている税理士にとって「あんたは偏屈だ」は褒め言葉です。たぶんw

関与先さんが問い合わせして来ても、国税庁の電話相談センターで裏取りをしていると考えなくちゃならない恐ろしい世の中です。迂闊で曖昧な回答は即、関与先の信頼を失う=契約が危うくなります。だから「自浄作用は働いている」という主張もありますが、税務相談だけが税理士の仕事じゃありません。そんなこと鼻から望んでいない、小沢さんや石井社長のような人もいます。だいたいそれは「自浄」とは言いません。

長々書きましたが、結局は「税理士って銀行を騙して金を毟る片棒を担ぐのか?」って話でした。

廣宮さんがいいこと書いてたので勝手に引用

よく、「既得権益」を持っているとされている方が批判の的にされます。

仮に、
「既得権益」を持っている方がいらっしゃるとして、

そのような方には、私はこのように申し上げたいと思います。

究極の私益とは何か、ということを突き詰めて考えて頂き、私益と公益を一致させるように折り合いをつける工夫をして頂きたい。

利益を独占し過ぎることなく、徳を積み、公益と「積善の徳の余慶が子孫に及ぶ」ということを、是非とも両立させて頂きたい。

それこそが結局は私益を極大化することになるという認識を持って頂きたい。

青臭い正義論はこれにて終わり。おつかれさまでしたww

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そうそう。朝連総鮮の人が無資格で申告書を作ってタイホ、というニュースをよく耳にしますが、あれは一体何なんでしょうね。単に学習しないだけなんだろうか。聞く度に「おいおいまたかよww」と思ってしまいます。

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鳩は申告書作っちゃダメですか?>はい、流罪です。」への2件のフィードバック

  1. とても勉強になりました。すっごく難しくてなんとなくしか理解できませんでしたが、雰囲気で楽しめましたよ~。
    そういや、ヨッシーニさんも税理士を目指しておられるんですよね。monotoneさんももうすぐですか?叔父が税理士をやっているので、是非今回のエントリーを見せてみたいなぁw

    • 廣宮さんも税理士志望でしたか!負けてられんw私はまだまだですね~。一昨年初受験でまだ一つしか受かってませんwしかも鬼門の税法初受験合格。40前には取りたいですね。でないと脳が死んでしまう、、、

      なので、ここまで偉そうなことを書いていいのか?とかなり迷いましたが、黙ってるのもどうなんだろう?ということでまとめてみました。「嫌なら辞めろよ」って話ですが、自分の担当先を守るため日々頑張っております、ということで勘弁してくださいw

      本職さんにもご意見を伺いたいところではあります。オススメいただいて全然okですよ。ただ「特定」に走るのはご勘弁くださいとだけお伝えくださいw

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