会社は誰のもの?

前回は株式会社X社の第二期目決算を通じて負債の時価評価について少し触れました。自社債の市場価格に連動させる形で負債の額を評価し直したところ、次のような??な状態になりました。

  • 自社の信用状態が悪化したことによって黒字が出た。
  • 企業としての規模(=総資産額)が縮小したのに黒字が出た。

という、一見おかしなことになりました。今回はこの「負債評価益」の持つ意味について考える前に、そもそも「利益(または損失)って誰のもの?」という点について考えてみます。

負債の時価評価をする根本的な理由は何でしょうか?それは、以前も少し触れたように「会社の売り買いをしやすくするため」、言い方を変えると「株式等の売買をしやすくするため」と言えます。日本でも盛んに行われるようになってきましたが、海の向こうでは合併とか分割などによって二以上の企業がくっ付いたり分かれたり、企業の一事業部だけを他社に譲渡したり譲り受けたり、いわゆる「企業再編」(M&Aと言ったりします)が当たり前?のように行われています。

例えば。少し前の話ですが、「セブンアンドアイ・ホールディングス」という会社ができました。この会社はセブンイレブンジャパン、イトーヨーカ堂、セブン銀行、ロフト、赤ちゃん本舗などなど、いろんな会社を統合する「持株会社」です。持株会社はそれぞれの企業の株式を保有するだけで、それ自身が事業を行うわけではありません。持株会社に株主を一本化することで、株主総会や取締役会などでの意思決定をスムーズにしよう、というのが持株会社の主な意図です。

この会社を設立するときには「株式交換」を行いました(確認してませんが行ったはずです)。もともと別の会社が別々の株式をそれぞれに発行していましたが、これを持株会社に統合するのがそもそもの意図です。その古い株式と持株会社が新たに発行する株式とを「交換」することになります。ですので、計算方法は省略しますが、統合する各株式会社の株価や収益力、そして資産価値などの各社の「比重」を計算して、例えば「持株会社の株式1株=セブンイレブン・ジャパンの株式3株」のように交換比率を求めます。そして各株式会社の株主は株の交換によって持株会社の株主になります。この交換比率は「資産・負債の時価評価」をした上で求めることになります。資産負債ともに正しく時価評価しないと「純資産価値」が求められません。

吸収合併にしても同様で、企業を統合するということ=その会社を買うということです。資産だけを買うわけではなく、負債も含めたいわば「貸借対照表を丸ごと買う」ようなイメージです。「買う」ということは「時価で買う」のが普通(相手の帳簿価格で買うということは言い値で買うようなもの)ですから、当然資産も負債も含めた全てを時価評価した上で、その対価を決定することになります。

ちなみに「買う」という表現をしましたが、現金で買うわけではありません。現金で買うとすると莫大な資金が必要になります。そのために「株式の交換」を行うことで済ませるのが普通です。

負債の時価評価を恒常的に行う、というのは「株取引=会社の売買」のための資料(貸借対照表)作りのため、と言えると思います。これは証券市場での株取引についても同じことが言えるかもしれません。株の売り買いをするということは、「会社の一部分を売り買いする」ということですから、判断材料として全てを時価評価した資料が必要になってくる、ということです。

で、この株式会社は誰のモノか?というと、株式会社は「株主のモノ」です。経営者のモノではありません。中小企業では「社長(代表取締役)=筆頭株主」だったり、「法人(企業)の借入の保証人=その代表取締役であるところの社長個人」だったりで、会社と社長個人との境目が曖昧だったりもするのですが、大企業(あるいは上場企業)の場合、普通はあり得ません。

株主は資本(会社運営の元手)を法人に提供し、経営ノウハウを持つ経営者にその運営を委託する。経営者は経営責任に対する対価として報酬を得て、その責任においてモノを仕入れ、売上げを立て、人を雇い、借り入れを起こしまた利益の一部で拡大再生産を図ります。さらに最終利益の中から株主に対して「出資に対する対価」として「一株当たり○○円」という形で出資の量に応じて配当を出します。つまり株主はお金を出して、経営者は会社を運営する、と役割が分かれており、それらは全くの別人であるのが本来の姿、ということです。

また、大企業が借り入れをする際も金額は一度に100億円とか1,000億円レベルで借り入れたりします。保証人は貸出先が返済できなくなったときに立て替えて支払える人ですから、いくらトヨタの社長であっても1,000億円の借金の保証人になることはナンセンスです。大企業の借り入れは所有する資産を担保とするのが普通です。中小企業の場合には社長個人が保証人になったりもしますし、会社が倒産すると同時に社長個人も破産する、というのが当たり前のようになっていたりもします。これはこれで問題がありますが、また別の話ですのでここでは省略。


会社が株主のモノであるということは「帳簿や財務諸表も株主のモノ」ということになります。そこで生み出される利益も損失も全て株主が享受することになります。利益がたくさん出れば株主は配当という対価を得ることができます。利益が出なければ配当は出ません。さらに業績が極度に悪化してその会社が倒産してしまえば、株券は紙くずになってしまいます。

でも、会社が倒産しても株主は出資した金額以上の責めを負うことはありません。TBSが倒産したとします。そこへ出資していたある株主が100万円でTBS株を購入していたとすると、倒産によってその100万円(とそれに伴う諸利益)はおそらく失うことになります。でもTBSが抱えていた数千億円?の銀行借入などについては株主は一切無関係で、後から「○○円払いなさい」と言われたりはしない、ということです。こうしてリスクの限度を出資額を上限とあらかじめ決めることによって、株主は被るリスクを最小限度に抑えることができます。つまり市場に参加しようとする者は安心して企業に投資をすることができるということです。これが株式会社の意義であり資本主義経済の大前提です。これによって今の世界経済は成立しています。

そして、会社は「株主のモノ」であって社債権者のモノではありません(この社債が「転換社債」(株式と交換できる社債)だったりするとそうとも言い切れないのですが)。社債権者はその会社の「債権者」ではあっても、会社の業績が良かったからと言ってその利益を直接享受できるわけではない、という意味です。ただし、社債として投資した以上の責めを負うことも株主同様にありません。

ここで前回確認したX社の時価評価後の貸借対照表をもう一度確認してみます。

貸借対照表の意味は覚えておられるでしょうか?何か見えてくるものがないでしょうか?

ということで眠くなったので次回に続きますw

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会社は誰のもの?」への2件のフィードバック

  1. なるほど・・・言われてみれば、
    負債も時価評価してれば、M&Aが円滑に進みそうな感じが
    しますねー。フムフム。
    頭の中がもやもやしてきたw
    次回wktk!

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