社債の買入償還 -痛み分けの裏ワザ-

前回は株式会社X社の第二期目を通じて有価証券の評価損について考えてみました。社債権者であるX社側では財務諸表上の資産が減ったのに対して、債務者であるA社側では負債の時価を評価しないために、財務諸表上のアンバランスが生じていることを確認しました。

今回は、自社債の市場での価値が下がってしまったA社側ではどういう選択肢があるのかについて考えてみることにします。この時点でのA社の貸借対照表の状態は以下のようになっています↓

A社BS

この時点でA社の貸借対照表(=帳簿)に記載されている自社債の金額は発行価額の150,000です。時価評価しない以上、自社債の市場価格がどう変動しようとも変わりません。償還日が来れば貸借対照表からはキレイに消えます。

社債は市場で売買されることもありますし、私募債(取引業者などに買ってもらう社債)などもありますが、市場で売買されていればそれを自分自身が買ってダメという決まりはありません。こうして自社債を買い取る(買い戻す)ことを簿記的には「買入償還」といいます。

市場で社債が売買されているということは、その社債はまだ償還日を迎えていない、つまりA社は無理矢理償還日前に買い取る必要はないことになります。それでも買い取ることには「それなりの」メリットがある、ということです。

H23.3.31時点のA社社債の市場価格は133,434でした。これをA社が買い取ると仕訳は以下のようになります↓

社債の買入償還

この仕訳は、前に触れた値下がりしたA社社債をX社がP社に売却した時の仕訳によく似ています。売り先がP社ではなくA社になっただけではあるのですが、この取引で誰が「得」をして誰が「損」をするのかが変わってきますね。この場合にはA社は自社債の価値が下がったので、それを買い戻すことで差額分お得でした♩、ということです。

ただし、この買入償還によって単純に当期は黒字になるのかというと、そうとも言えません。何故なら、自社が発行した社債が値下がりするということは、自社の信用状態が悪化していることにそもそもの原因があるからです。不況による売上の激減が原因だったにせよ、有価証券などの資産価値が下落したのが原因にせよ、いずれにしても収益の悪化という「原因」があって初めて信用状態の悪化という「結果」が発生します。
買入償還の仕訳だけを見れば確かにお得ですが、発行した社債の全てを買い戻すという訳にもいかないでしょうし、全体的に見ると決してそうとは言えないことになります。

もっとも、実社会において社債を市場で販売するような規模の大きな企業は、多少景気が悪化しても買入償還以外の本業による収益で黒字を出したりしているので、狼狽えることはないんじゃないかな?という気がしてます。
TBSの場合や鳩山不況が到来したらどうなるか分かりませんが。

次回からは、欧米のように負債を時価評価した場合には、X社のH23.3.31の財務諸表はどうなるのか、について考えてみます。
うまくまとめられますように(汗

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