割引現価計算 -非日常の世界-

前回は社債を発行する際の利息はどのように決まっていくのかについて考えてみました。その過程は

1.信用リスクを見積もる
2.最低限確保すべき元本と利息を算出する
3.貸倒の危険負担としての上乗せ利率を設定する

こんな感じでした。個人的には「リスクプレミアム」なんてすごーくイカサマというかヒドイというか、理に適ってはいるけれども「なんだかなー」という感じがしてます。

それは置いといて。株式会社X社の第二期目を見る前に、今回はやはり「割引現価計算」を通じて、社債の市場価格がどう決まるかについて考えてみることにします。どうしてかというと、X社の第二期には鳩山不況が発生するからです(爆。そのため、購入した社債の「時価評価」をするためにどうしても必要なツールだからです。

もちろん、これからの話は前回同様信用リスクをメインに考えた「仮定」(というか仮説)に基づくものです。違ってたらツッコミをお願いします。

いきなりで恐縮ですが「割引現価計算」とは、

『将来得られるであろうキャッシュフローを、約定利子率で割り引くこと』

と簿記や財務諸表のテキストには定義されています。単語の定義はそれぞれ次のような感じです。

  • 「キャッシュフロー」

現金の流れ(出入り)。出ていく場合は「キャッシュアウトフロー」、入ってくる場合は「キャッシュインフロー」です。これから先めんどくさいので、出ていく場合は「COF」、入ってくる場合は「CIF」とします。

  • 「約定利子率」

例えば株式会社X社が保有するA社社債の利率は5%でしたので、これが約定利子率です。「約束」して決めた利率、という程度の意味です。この利率には前回確認した通り、「信用リスク」という裏付けがあることになります。

  • 「将来得られるであろうCIF」

これは株式会社X社のA社社債を例に考えてみます。
X社はH21.4.1にA社社債を以下の条件で購入しています。

額面金額:150,000
償還期日:H24.3.31(3年間)
利率:年利5%(年額7,500)
利払日:毎年3.31

ということで、毎年の得られるCIFは次のようになります。

一年後:150,000×5%=7,500
二年後:150,000×5%=7,500
三年後:150,000×5%+150,000=157,500
合計は172,500で、これが「将来得られるであろうキャッシュフローの合計」です。図にするとこうなります↓

将来CIF

では「割り引く(割引計算をする)」とはなんでしょうか?

そもそも割引現価計算をする目的は、将来得られるであろうCIFの「現在の価値」を求めることにあります。「現価計算」は「現在の価値を計算する」という意味です。

上で求めた172,500は、元本150,000に約定利子率5%を毎年掛けて、最後に回収する元本を足して求めた額です。

  • 一年目のCIF7,500は150,000に5%を掛けて求めました。この7,500という金額は、一年後に得られるであろう金額ですので「一年後の時点の価値」ということになります。
  • 二年目のCIF7,500は150,000に5%を掛けて求めました。この7,500という金額は、二年後に得られるであろう金額ですので「二年後の時点の価値」ということになります。
  • 三年目のCIF157,500は150,000に5%を掛けて、最後に元本を足して求めました。この157,500という金額は、三年後に得られるであろう金額ですので「三年後の時点の価値」ということになります。

これらの3年間のCIFをそれぞれ「割り引いて」合計してみます。「割り引く」とは「割って戻す」という意味です。
要領は以下の通りです(端数切り捨て)。

  • 一年目のCIFの現在価値:7,500÷1.05=7,142
  • 二年目のCIFの現在価値:7,500÷1.05÷1.05=6,802
  • 三年目のCIFの現在価値:157,500÷1.05÷1.05÷1.05=136,054

これらを合計すると、150,000になります。図にするとこうなります↓

将来CIFの現在価値

これは、先に計算した「将来得られるであろうキャッシュフローの合計」を求める過程を逆に辿っただけなので、当たり前といえば当たり前の結果ではあるんですが、私が初めて電卓を叩いて合計した時にはどこかで計算を間違えたような、騙されてるような不思議な気分になりました。このへんの「計算の不思議」については詳細は省きます(要するに「何で1.05で割るのか?」とかは聞かないで、ということですw)。

ちなみに、社債購入から一年経過したH22.4.1時点での割引現在価値は以下のようになります。

一年後のCIFの現在価値:
7,500÷1.05=7,142
二年後のCIFの現在価値:
157,500÷1.05÷1.05=142,857
合計はやはり150,000になります。

図にするとこうなります↓

将来CIFの現在価値(2)

こうやって

「将来得られるであろうキャッシュフローを、

約定利子率で割り引くことによって、現在価値を求めること」

が「割引現価計算」です。

この割引計算は、社債や貸付などの現在価値を求めるだけでなく、以下のようなケースで用いられたりします。

  • 「古くなった機械を売るべきか、買い替えるべきか」の判断材料として、新旧の機械の使用によってそれぞれのCIF・COFを天秤に掛けて判断する場合
  • 機械などの固定資産を借り入れて購入すべきか、それともリースとして借り入れるべきかを判断する場合
  • 「店舗の売上が落ちたけど営業を続けるべきか、土地建物を売却して撤退すべきか」など将来の営業収益と土地建物の売却益を天秤にかけるような場合

これら全て、「割引計算」しなければ正確な判断はできません。今の10,000と10年後の10,000とでは、「額面」は同じでも「価値」が違うからです。金利とか利息などによってある一時点(たとえば現在)での価値に換算して比べなくては判断を誤ることになります。

では、社債の市場価額とか時価評価とどのようにこれが関わってくるのでしょう?

次はそのあたりのことをまとめていきます。

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割引現価計算 -非日常の世界-」への6件のフィードバック

  1. おはようございます♪
    文系の私には厳しくなってきましたががんばって付いて行きたいと思います☆
    利息はインフレ率と同じなら問題がないように思います。^^);
    デフレから脱却したいです。♪

    • おはようございます。
      割引現価計算、むずかしいですよねー。私も構造的なことしか分かってなかったりしますwでも、利率とか資産価値を考える上ではすごく大事なことですし、利率と資産価値がどうして「反比例」するのかもはっきりしてくると思います。次はその辺についてまとめてみようと思ってます。

      利率(金利)とインフレ率の件、いま一つ掴み切れていませんが、すごーく大事なことだという直感だけはあるのでじっくり考えてみます。

  2. なんと…コレは完全に去年やったところだ…
    個人的にはこのあたりは結構好きですね。
    でも記憶から半分抜け落ちていますので勉強させてもらいます~。

    • 好きですか!私は苦手ですね。。。かつて一級の勉強もしたことがありましたが奮闘空しく玉砕w
      工簿ではよく使いますよね。でも実務ではほとんどの人は縁がない。たぶんこれは会計士とかが腕試しに学ぶものなんじゃないかな?と思います。いずれ誰もが逃げられなくなるんだと思いますが、あまりに非日常的ではありますよね。
      (だから分からなくてイイんです、と逃げてみる)

  3. いや私も普通に玉砕したんですけどねw
    でもあーいうのって、決して時間の無駄じゃないですよねー
    …と信じていますw
    実務ではあまり使わないのですね…ふむ。
    私はそもそもITの技術系やってたので、畑違いもいい所ですw
    合わないなーと思い辞めちゃいましたがw

    • 実務、と言っても「中小企業レベルでは」ですね。大企業がそれこそセグメントの切り捨てとか減損会計やる時には絶対使うでしょうが、正確にいうと中小企業では使わないというより「使い道がない」ですね。

      でも工業簿記の考え方って、会計士に限らず絶対生きてきます。それこそ訳が分からなくなるほど原価計算を叩き込まれますし、分析という意味では確実に経営の役に立ってるはずです。会計事務所は半分それが仕事ですし。

      ということでそっち方面に進まれるのもいいかもしれないですよ。うちにもIT系の経験者がいて、システムとかサーバーの管理でかなり重宝してますし。景気次第ですけど需要はあると思いますよ!

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