利率と債券価値

前回は、社債や国債の意味とX株式会社の設立~第一期決算までの流れを見てみました。今回は二期目について見てみようと思いましたが、その前に社債や金融債券の「金利」がどう決まるかについて整理してみます。
(注:この話は銀行勤めの友人から聞いた、あくまで「原理」の話です。実際には「市場」がこの通りに考える訳ではなく他の要素も絡んでくる、とのことでしたが、私的には一気に霧が晴れるような話に感じられたので、さらにデフォルメ(割引現価計算をとりあえず無視)しつつまとめてみます。)

主人公A社がH21.4.1に社債を発行して市場から150,000を償還期日H24.3.31(3年間)で資金調達したい、と考えたとします。この場合の利率はいくらで発行すべきか?というお話です。電卓があれば是非検算してみてください。ついでに違ってたらツッコミをお願いしますw(ちなみに端数は無視します)

「利率を何%にすべきか」ということは、極端にいえば社債を発行する側に決める権利はありません。要はお金を借りるのと同じことですから、借りる側が自由に金利を決める訳にはいかないということです。
利息や金利は「貸し付け」の対価として市場(投資家)が要求します。もちろん社債という「クーポン」を発行する以上、最終的には発行する側がそれに利息なり利率を書き込むのですが、「利率がいくらなら投資家は買ってくれるのか」を見極めて発行することになります。もし独断で2%で社債を発行しても、投資家が要求する利率が10%であれば「儲からない」とみなされて買ってもらえません。「札割れ」を起こす=売り出した社債が売れ残る、ということになります。ですので原理的には市場が決める、ということになります。
ではどうやって決めるのか、というと以下のような3つの「仮定」に基づきます。

<仮定 その1>

市場(投資家たち)はA社含む100社(信用状態(リスクの程度)はどこも似ている)のグループに同じ条件(額面150,000、満期日が3年後)で投資をする場合、そのうち例えば10社がデフォルトするため1円も回収できない(90社分しか元本と利息の回収ができない)と想定します。要するに「貸倒リスクの見積もり」をします。

<仮定 その2>

もし貸倒リスクのないの年利1%(利息年1,500)の日本国債で同じ金額

150,000×100社分=15,000,000

を運用すれば、三年間に回収できる金額は、

15,450,000
=元本(150,000×100社分)
+利息(1,500×100社分×3年)

になることは確実です(貸倒の危険がないため)。
この国債利率1%を「無リスク率」(リスクを抱えずに投資した場合に得られる利息の率)と考えます。

仮定その1により、社債に投資すれば10社分についてはデフォルトにより元本と利息を全く回収できないことを想定していますから、社債に投資するのであれば残りの90社から受け取る利息で10社分の元本と利息の穴埋めをさせて回収しなくてはならないことになります。
つまり90社から最低限回収すべき金額は、元利合計で国債による確実な運用と同じ15,450,000ですので、以下の方程式を解いてこれと同額になる利率Aを求めることになります。

15,450,000
=150,000×90社分
+150,000×90社分×A×3年

これを解いていくと、、、

A=0.04814…(≒4.81%)

となります。この4.81%でA社含む100社に投資すれば、国債によるリスクのない確実な運用をした場合と同額の資金の回収が得られることになりますが、言い方を変えると、投資家はA社含む100社に対して最低限4.81%の利率を要求しないと国債を購入した場合よりも回収額が少なくなる、ということになります。
この4.81%から無リスク率1%を引いた3.81%が、デフォルトする10社分の穴埋めをするためのコスト、あるいは穴埋めのための補填率、と言えます。

<仮定 その3>

上の計算で求めた利率4.81%をA社社債に求めれば投資家は満足するかというと、満足しません。なぜなら4.81%という利率は確保すべき最低限の利率でしかないからです。もし仮定その1での想定を超えた11社がデフォルトしてしまえば、投資家にしてみれば「国債で運用した方がマシだった」ということになってしまうからです。
そこで(例えば)あと2社デフォルトしても大丈夫なように、貸倒の危険負担の対価として上乗せ利率を要求することになります。つまり、88社分しか元本と利息の回収ができないと想定して、以下の方程式によって利率Bを求めることになります。

15,450,000
=150,000×88社分
+150,000×88社分×B×3年

これを解いていくと、、、

B=0.05681…(≒5.68%)

となります。
このB5.68%とA4.81%の差0.87%が「リスクプレミアム」と呼ばれるものです。これはリスクの負担率と言えると思います。
こうして、A社が社債を発行しようとした場合に設定すべき社債利息は

5.68%

と求められることになります。

私としてはこんな感じの説明を受けてかなりスッキリしたのですがどうでしょうか??

以前、「利率は資金の需給バランスと貸倒の危険度で決まる」と書きましたが、貸倒の危険度というよりも「信用リスク」と言った方が適切だったかもしれませんね。

もし、A社の信用リスクがさらに高いと考えると、初めにグループ分けされる100社中のデフォルトする企業の割合も例えば20社と多めに想定することになります。ということは、残る80社から受け取る元本と利息でその穴埋めをしなくてはならないため、利率もさらに高くなります(これについては後日まとめてみます)。
逆にもしA社が超優良企業で信用リスクなしと判定されれば、日本国債と同じ1%でも社債を発行できることになります。

海外のいろんな国の国債が「札割れ」しているという話も、上の考え方を援用するとスッキリする気がします。

上の方であえて無視した「割引現価計算」については、次回整理したいと思います。実務簿記や日常生活ではほとんど使わないのですが、金融や時価のことを考える上ではどうしても必要なことなのでまとめてみます。
ちなみに私は苦手です(汗

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利率と債券価値」への2件のフィードバック

  1. おー!
    昨年暇で簿記の1級を勉強していた頃にこの辺の内容あったのですが、もはや完全にド忘れしていました。これこそまさに、合理的 な考え方ですよね。スッキリしますね~。

  2. ピンバック: 負債の時価評価 « ELG35's Blog

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