簿記的に見た経済の話 <その7> 銀行の自己資本比率

前回は一般企業や銀行の自己資本比率の分母=資産(リスク資産)、分子=自己資本の意味とそれぞれの算出方法について考えてみた。ここでは、「BIS規制」によって自己資本比率が悪化した銀行がどういう行動を取ることになるのか、について考えてみる。

銀行の資産状況を考えてみると、前回示した下の金融資産を各銀行はそれぞれの割合で保有していることになる。

大企業向け融資・・・格付け機関の格付け、又は銀行ごとの「内部格付け」による
個人・中小企業向け融資・・・・75%

住宅ローン・・・35%

国債、地方債・・・0%

貸借対照表の借方側に危険率の違う金融債権がいろいろと並んでいる、ということだ。また、銀行の自己資本比率の算式は以下の通りだ。

自己資本比率=自己資本/リスク資産

例として自己資本が5,000円の銀行が以下のような資金運用をしている、と考えてみる。

中小向け融資・・・100,000円
住宅ローン・・・・100,000円
国債・・・・・・・100,000円
(合計・・・・・・300,000円)

それぞれに上記の危険率を乗じるとリスク資産の額は以下のようになる。

(中75%×100,000)
+(住35%×100,000円)
+(国0%×100,000円)
=110,000円

自己資本の額は5,000円だから、自己資本比率は4.545…%となるので、国内基準の4%を上回っており、とりあえずは営業ができる状態、ということになる。

ここで100,000円を貸し付けている中小企業が業績不振により決算書で赤字を出したとする。すると銀行としてはその企業への融資の貸倒の危険性が上がる、と考えることになる。「赤字決算」ということは、このままではいずれ手元資金が枯渇する状態を指す。金融機関への返済は約束の期日になれば必ず口座からお金が落ちるが、銀行からするとこの回収が約定どおりに出来なくなる恐れがある、ということ。この危険率が査定の結果たとえば100%に上がってしまった場合、リスク資産の額、自己資本比率はどうなるか。

リスク資産
(中100%×100,000円)
+(住35%×100,000円)
+(国0%×100,000円)
=135,000円

自己資本比率
=5,000円/135,000円
=3.703%4%→営業が継続できる

となる。要は自己資本比率の分母(リスク資産)を減らす、ということになる。

貸し渋り、貸し剥がしはこういう制度上の仕組みがあるために生じてくる。銀行がケチだからとか、ユダヤの金貸しがどうこうとか、「金融資本の暴力的搾取だ!」とか、そういうことではなく、単に「自らの責任において融資することを厳しく求められている」ということだ。実際に返済が当初の予定どおりではどうしても苦しいのであれば、銀行は交渉すれば返済の繰り延べ(リスケジューリング)に応じてくれたりする。これも「誠意」次第だ。

貸し剥がしについては法の縛りがあるため、借りていたお金をいきなり銀行が取り立てに来たり令状で差し押さえたり、ということはない。「突然」ということはあり得ないし、そういう目に遭うとすれば普通は借りてる側の不誠実さの問題だと思う。
貸し渋りについては、融資を断る=貸し渋りとは一概に言えない。返してもらえないところには貸せないのは当たり前だからだ。ただ、<その1>で確認した通り、融資を受ける企業の資産価値がある程度高ければ、多少売上が伸び悩んでても借り入れを起こすことはできる。資産価値が高いということは、<その3>で見た固定資産(国富)の時価が高い、ということだから、企業はこれを担保に借り入れを起こすことができる。
逆に資産価値が目減り(例えば地価の下落など)したらどうなるか。企業のBSの借方側が縮小すれば、純資産額=その企業の価値が減ることになる(これも<その3>で見た国富=純資産=底力の考え方にも通じる)。企業会計上、固定資産は原則として時価評価しないが、銀行が回収可能性を判断する際には時価を見る。地価の高い時に購入した土地の時価が下がれば、当然資産価値は減る=企業の純資産額が減る、ということだ。
つまり、貸し渋りは一企業や銀行の問題ではなく、世の中全体の問題ということにもなる。これをどうするかについては割愛する。

<解決その2 分子を増やす>
銀行が自己資本比率を改善するためのもう一つの方法は「増資」つまり「公的資金の注入」だ。上で見た「自己資本比率の分子を増やす」という方法だ。銀行が営業出来なくなる=倒産するということは、融資を受けている家計や企業にとっても、預金を預け入れている家計や企業にとっても甚大な混乱をもたらすことになる。「銀行の信用創造機能」が崩壊する、ということだが、この「信用創造機能」については後日考えることにする。<その3>で見た千数百兆円(!!)の金融BSが崩れ去る→消え去る!!事態を考えるのであれば、たかだか数兆円の「税金の投入」は極めて安く上がることになる。
税金の投入と言っても、税金を「くれてやる」訳ではない。国が銀行の株を買う、つまり株主として経営に口を出すということだ。財務体質が改善されれば税収や配当により回収出来るし、株価が上がった時点で市場に売却したり自己株式として銀行自身に買い取らせたりすることも出来る。つまり税金の投入=施しではなく、「資金の臨時貸付」にイメージとしては近い。

以上を図式にするとこんな感じ↓

銀行

このように考えてみると、「国は銀行ばかり救済してズルい」というのが如何にナンセンスな話であるか分かるし、麻生前総理が就任前から盛んに「雇用を守るために先ずは銀行への公的資金の注入もやります」と仰っていた意味も理解出来る。銀行がバタバタ倒れる状況の下では企業は繋ぎ融資を受けるどころの話ではなくなり、企業も倒れるしかなくなるからだ。

賛否両論渦巻く亀井静香氏オススメの「モラトリアム」の愚策についてもまとめようと思ったけど、長くなったのでここで終わり。次は「信用創造機能」(金融資産が膨張する仕組み)について考えてみる。グダグダになったりして(汗

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