簿記的に見た経済の話 <その6> 銀行の貸借対照表

前回<その5>は日本政府の負債(国債含む)の現状がどうなっているかについてまとめた。国債を購入しているのは銀行だけではないが、ここでは銀行のBSについて長いけど簡単に見ていくことにする。

銀行は家計や企業から資金を「預金」の形で借り入れ、利鞘を稼ぐために借り入れた資金を融資する(貸し付ける)ことで受取利息を収受することは<その2>で確認した。銀行は各種の法律などによってその財務体質が健全であることを厳しく規定されているのだが、その辺りの事情について。
銀行は金融庁のお達し(BIS規制)によって「自己資本比率」を一定以上に保つことを求められている。これ以下の水準になってしまうと銀行としての営業ができないため、彼らにとっては「絶対防衛線」とも言うべき死守すべきものだ。BIS規制のBISとは「国際決済銀行」のことで、国家間の資金の流れについて調整を図る機関をいう。BIS規制とはこのBISによって各国の金融機関が順守すべき自己資本比率の規定を指す。ちなみに「自己資本比率が一定以上」とは、海外に営業拠点を置く銀行はこれが8%以上、国内のみの銀行は4%以上とされている。8%の銀行と4%の銀行の違いは為替リスクなど技術上の問題を規定するもの(市場リスク規制)を考慮するかしないかの違いであり、難しいためここでは「営業拠点が国内のみの銀行」について主に考えていく。

ところで、自己資本比率とは何だろうか?

企業の財務諸表の分析で用いられる「自己資本比率」と、銀行のBIS規制でいうところの「自己資本比率」とは意味合いが若干異なる。後者の計算式は少し複雑になる。

前者の、一般的な意味での自己資本とは、貸借対照表の右下の「純資産の部」とほぼ同義だ。貸借対照表の貸方のうち、上半分の「負債」は「他人に対して支払いや履行の義務を負う債務」=他人資本であり、下半分の「自己資本」は「返済の必要のない自らの元手(繰越利益含む)」、ということ。貸借対照表ではこの「他人資本」と「自己資本」が「資金の調達源泉」としてBSの貸方に記載され、全ての資産は「その運用形態」として借方に記載されている。
自己資本比率とは、総資産(借方の総合計=貸方の総合計=他人資本+自己資本)に占める自己資本の割合をいい、その会社の財務状況がどの程度安定しているかを示す指標の一つだ。自己資本比率が100%であれば他人へ支払うべき債務がゼロの状態ということになり、自己資本比率が0%であれば全て借入や掛け買い、未払いなどによって資産を調達していることになる(ちなみに「債務超過」の状態では自己資本比率はマイナスになっている=元手と繰越利益を食い潰しているため)。
計算式は以下の通り。

自己資本比率=自己資本/総資産

図式するとこんな感じ↓

一般企業

(BIS規制による自己資本比率の図式は次回載せます)
一方、後者のBIS規制でいうところの銀行の「自己資本比率」の算式は以下の通り。

自己資本比率=自己資本/リスク資産

このBIS規制でいう自己資本の額(分子)はざっくり言うと、

1.「資本金、積立金、繰越利益など」
2.「不動産やその他有価証券の評価益、貸倒引当金など」
(その他有価証券は、例えばお付き合いなどで購入した株式。不動産と同様に通常の形では時価評価しない)
3.「配当・役員賞与予定額など」

の合計だ。これらは全て仕訳上は貸方項目となるものだ。簡単に言ってしまうと自己資本=「自己資本の額を再評価した金額」ということになる(貸倒引当金は費用計上したものを繰越利益に戻す、ということ)。

分母のリスク資産は「(貸倒の)リスク(がある)資産」をいい、「信用リスク規制」により算出される。リスクの増減は信用の問題なのだ。算式が示す通り、一般企業でいうところの「自己資本比率」よりも分子は大きくなり、分母は小さくなる(割合が小さくなる)。数値の意味合いは、「貸し倒れの危険性のある資産全体に占める、自分のものとみなす元手の占める割合」ということになる。
この割合が大きい(リスク資産が少ない、又は自己資本が多い)と「安定している」ことになるし、この割合が小さい(リスク資産が多い、又は自己資本が少ない)と「不安定な状態」ということになる。

さて、分母の「リスク資産」とはなんだろうか。ここでいうリスクとは「貸し倒れのリスク」つまり「回収ができないかもしれない危険性」をいう。リスク資産とは「全ての資産のうち、貸し倒れの危険がある資産」ということになる。貸出先(金融資産の種類)によってこの危険性(危険率)は変わってくるが、リスク資産とはそれぞれの債権額に危険率(リスクウェイト)と掛けて求め、その金額の合計が自己資本比率の分母となる。危険率はざっくり言って以下のようになる。

大企業向け融資・・・格付け機関の格付け、又は銀行ごとの「内部格付け」による
個人・中小企業向け融資・・・・75%

住宅ローン・・・35%

国債、地方債・・・0%(←ここ注目)
(注意:危険率=簿記でいうところの「貸倒実績率」ではない)
国債を保有している側(債権者)の危険率算定において、「国債がデフォルト(返済不能)に陥ることはあり得ない」と考えている、というのは面白い。しかもこの「お達し」は国際的な取り決めとはいえ金融庁→内閣府、つまり政府から発せられたものであることを合わせて考えると、「日本政府は財政破綻の危機にある」と政府自身が宣言するのがいかに滑稽かがよく分かる。増税のための方便としか思えない。

長くなったので今回はここまで。次は銀行のリスク管理について考えてみる。

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