簿記的に見た経済の話 <その5> 日本政府はいつ破綻するのか?

前回は貸付金(⇔借入金)とそれに係る利息について書いた。利息とは、

○利率は資金の需給バランスと借り手の貸倒リスクによって決まってくる。
○決めるのは貸し手と借り手をひっくるめた「市場」。

ということも確認した。
これから日本政府の金銭債務である「国債」について確認してみる。
簿記はあまり関係ないかもしれないがが、貸借対照表を意識する必要がある。

学習簿記にはよく「社債」が登場する。これの国バージョンが「国債」。企業会計的に言えば「借入金」ではなく「社債」に該当する。購入した側にとっては「投資有価証券」となる。国債には利息ももちろん付される。債券の流動性(市場で販売・購入できる)を考えると借金とは言えないのだが、それでも、貸借対照表の貸方に記載される厳然とした負債であり、「返さなくてはならない債務」であることから、ここでは国債も借入金も同義と考えていく(実際には違う。貸付債権が市場で売買されることはない。売買されるのはあくまで『債券』だ)。

国債含めた政府の負債が1980年以降どのくらいの勢いで増えているのかを見てみる。

日本政府の政府負債残高(赤線)
(三橋貴明さんのHPより)

赤線が政府の負債の残高。約30年前を「1」とすると2008年は「8」。なんと8倍に増えている。これはヤバイ!

もう一つの表を見てみる。

1995年武村正義元蔵相「財政危機宣言」以降の日本政府の負債
(三橋貴明さんのHPより)

1995年当時、時の大蔵大臣が「日本政府は財政破綻の危機にある」と発言してからの推移のグラフ。それから15年、状況はさらに進行して負債総額は倍以上になり、500兆円も増えている。。。
テレビや新聞は今日も「財政破綻」「財政危機」を囁き続け書き立てている。



三橋さんのコメントにもある通り、何かおかしくないだろうか?財政危機という今にも国が潰れそうなことを担当大臣が国会の場で公式に「宣言」したにもかかわらず、日本国政府は15年も存続している。しかも「もう貸さないよ」と宣告されるどころか、「借金」は倍以上増えている。。。。

誰がどんな意図でどう発言したかはとりあえず置いておいて、現状の日本政府の財務諸表を確認してみる。

国の財務書類 平成19年度 (財務省主計局)

いわゆる決算書だが、2年越しでないと国会の承認が下りない。というか後回しにされている。
それはさておき、これの9枚目3ページには貸借対照表が記載されている。これを見る限りでは、

資産総額→694兆円
負債総額→977兆円

差引282兆円の債務超過となっている。確かに「好ましくない」。「破綻する!」というのもあながち間違いではない気もしてくる。でも、「破綻宣言」から15年、負債総額が破綻どころかさらに倍増しているということは、「国債を買ってくれる(=お金を貸してくれる)人がいる」ということでもある。
結局のところ破綻するのかしないのか、どっちが正しいのだろうか。。。

国債は市場で流通している債券だ。ということは購入する側には有価証券利息が発生する。利率は「需給バランス」と「貸倒リスク」を考慮して市場が決定する、ということを確認した。「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」というやつだ。日本国債市場は日本国債をどう判断しているのかを見てみる。

1995年武村正義元蔵相「財政危機宣言」以降の日本政府の負債

二つ目のリンク先のグラフと同じもの。ピンクの折れ線が日本の長期金利の推移を表したグラフだ。「破綻する!」と大蔵大臣が発表したときの長期金利が3.19%。15年後の負債が倍増した現在の長期金利が1.17%。長期金利は下がっている。
危険度という意味では市場は「日本国債は貸倒の懸念がある債権」とは見ていないようだし、同時に利率が低いということは借りる側の需要以上に貸す側の供給量が大きい、ということでもある。俗っぽい言い方をすれば、国債の買い手(貸し手)からすると「金利が安くてもいいから借りてください」という状況といえる。
ちなみに、

日米独仏英欧韓豪の2003年以降の長期金利の推移
(外務省HPより)

これのP13を見る限り、日本の長期金利は圧倒的に低い水準を保っている。このこと自体がいいか悪いかは置いておくが、少なくとも市場の評価は「安全」ではあるのは確かなようだ。

まとめ
○日本の国債を買いたがる人は実は多い。
○日本政府への貸倒リスクという面では市場は低いと見ている。
∴日本政府は破綻とはほど遠い(安定して資金を調達できる)

大蔵(財務)大臣が「うちの政府は破綻しますよ」と公式に宣言したものの、市場はそうは見ていない。一般の企業であれば、財務担当者が融資を受けなくてはならない状況のときに銀行相手に「うちはそろそろアブナイんですよ」と必死になって言い立てるようなものだ。しかもそれが事実でないことは相手にも知れている。背任というよりも自らが運営する組織への忠誠の質が問われるべきだと思う。

次は「銀行」のBSについて考えてみる。

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