簿記的に見た経済の話 <その3> 日本国の金融資産と底力

前回は「政府の負債は家計や企業の資産」である、と書いた。ここでは政府の債務(主に国債)と外国との関係について考えてみる。

その前に、↓「日本国家のバランスシート」を見てみる。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_23.html#BS0906
↑ これは日本の家計、企業、銀行、政府の金融資産・金融負債のバランスシートをくっつけたもの(以下「金融BS」)だ。各金額の単位は「兆円」で、現預金と有価証券、貸付金などの金融債権及び金融債務のみ。財務諸表上「純資産の部」に含まれる資本金については「金融負債」に乗っている。乱暴に言ってしまうと、真っ当?な形の貸借対照表の当座資産より下の『有形固定資産部分だけ』をぶった切ったのが金融BS、ということになる。
また設備などの有形固定資産を含めたものについては、日本の国富のグラフ http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_23.html#Kokufu (以下「国富グラフ」)によると、日本国家の非金融資産(有形固定資産など)は時価総額2,536兆円(!!)もある。

見慣れない表ではあるが、この金融BSと国富グラフからは次のことが読み取れる。
1.金融BSの貸借の差額は対外純債権(外国に対する貸し付け分)で、その額250兆円。
2.国富グラフの非金融資産(有形固定資産など)の貸方側はそのまま「純資産」となる。
3.2の純資産はそのまま日本の「底力」を表す数値となる。
表にするとこんな感じ↓

対外純資産と国富の考え方

つまり日本は「意外と」どころか立派な世界最大の債権国なのだ。これも「政府の負債は家計や企業の資産」という話と同様にあまり耳にしない大事な事実だ。

上の3点については少し分かりにくいので単純に簿記的に考えてみることにする。

<1について>
少しわかりにくいが単純なことではある。記載されている「金融債権」「金融債務」は「日本国内の」各会計単位のBSに記載されているものである。このため日本という国全体で考えれば相殺は可能。従ってその差額は国内の債務を国内の債権で相殺して相殺しきれない分、つまり「余った分」=外国に対する貸付け=対外純債権ということになる。日本は対外「純」債権国なのだ。
日本が「対外純債権国」であるということは海の向こうのどこかに「対外純債務国」が存在するはずである。「誰かの債権は誰かの債務」という考えは海を越えても通用する原則だからだ。そして地球上の全ての国家の純債権と純債務の総合計はプラスマイナスゼロになる。これについては2社間ですべての取引が完結している2つの法人のBSを考えてみると分かりやすいのだが割愛する。

<2について>
なぜ「有形固定資産に対応する貸方項目は純資産」になるのか?これも分かりにくいが、少し割り切って考えることにする。有形無形の固定資産に該当する部分は、購入した際の仕訳の貸方側は金融BSの資産を減らしたか、金融負債を増やしたか、どちらかしかあり得ない(『有形固定負債』というものは存在し得ない)。マトモな形のBSから固定資産を切り離したのが金融BSなのだから、この有形固定資産は金融BS上の簿外資産という位置づけになる。また、貸方側(=支払い)についてはすでに織り込み済み、ということになる。
また、これらの土地や設備等の評価額がマイナスにならない限り評価損をいくら計上しても債務超過にはならない(評価額がマイナスという状態はあり得ない)。現実には評価額ゼロもあり得ないから、時価評価相当額が日本国家の純資産額(簿記的に言うと繰越利益剰余金)を押し上げることになる。この考え方は金額の大小はあれ、日本に限らずどの国にも通用する。
これは貸借対照表のそもそもの定義を考えれば分かる。貸借対照表の借方側はその会計単位の財産の運用方法(=どんな形で財産を持っているのか)を表わし、貸方側はその財産の調達源泉(=誰からどんな形でお金を引っ張ってきたのか)を表すから、支払い処理が織り込み済みなのであれば、資産側(借方側)のプラスは貸方側の純資産額のプラスになる。

もっと乱暴に言うと、金融BSの作成上ぶった切った有形固定資産を再び無理やりオンバランスする(BSに乗せる)にはどうするか。「2,536兆円の固定資産を前期以前に消耗品費として処理してしまった(!)」と考えてみる。すると仕訳はこうなる。

借方 有形固定資産  2,536兆円  / 貸方 繰越利益剰余金   2,536兆円

学習簿記上の科目は「前期損益修正益」だが、それは結局のところ決算振替によってBSの繰越利益剰余金の増減になるのだ。

<3について>
企業が有形固定資産を購入するのはなぜだろうか?言うまでもなく、それを用いてモノを作って売るためだ。

うどん屋さんは製麺機がなくてはうどんを作れない。
JRは列車や線路がなくては営業できない。
自衛隊は護衛艦や戦闘機がなくては国を護れない。

貸借対照表日より先の未来を考えると、これらの資産を今から手に入れるのか、すでに持っているのか、ということになる。今から2,536兆円分の各種の固定資産を手に入れるのであれば、金融資産をその分減らすか、金融負債をその分増やすか、どちらかしかない。国としての各種活動の原動力としての有形無形の固定資産(インフラ資産)を日本は現時点で国内外問わず2,536兆円分持っていることになる。

まとめ

○国家として見ると日本は金持ち
○インフラの整備がかなり出来ている
○その水準は世界最大

ということになる。よく言われる日本製品の質の高さも考慮すると、そう簡単に「日本は沈没する!」とは言えないはずだが、製品の付加価値については簿記では図れないことなので割愛する。

今まで漠然と抱いてきたイメージがひっくり返ったような気になる。
長くなったのでここで終わり。次こそは「政府の負債」について書く(汗

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